ブドウは手摘みで収穫し、完全に除梗し、野生酵母のみでグラスファイバーのタンクで自発的に発酵。ブドウ以外の醸造添加物は一切加えずに醸造。マセレーションはアンフュージョンで 5~8 日間。木製の古い手動式の垂直圧搾機でソフトに圧搾後、引き続きタンクでシュール・リーの状態で自発的なマロ発酵と熟成。無清澄・無濾過で瓶詰め。SO2は醸造中は無添加。ボトリング後のワインのネガティブな反応を避けるために、瓶詰め前に必要最小限のみ添加。
2021 ヴィンテージは収穫日は 10/16。総生産量 2,350 本。アルコール度数は 11.9 度。
2023 年 12 月時点の SO2 トータルは 10mg/l 以下の検出限界値。
キュヴェ名の Grande Falaise グランド・ファレーズとはフランス語で『大断崖』という意味です。
このキュヴェが造られるメルローが栽培されている区画は、地元のロッククライマーが PontCaf ポンカフェと呼ぶ 35 メートルの大断崖の上に位置しているため、このように命名されました。ピエールはロッククライミングが趣味で、20 年ほど前にクライミングを始めたばかりの頃は、この断崖の上にブドウ畑があることを知らずにクライミングをしていたそうです。
グランド・ファレーズ 2021 ピエール・ゴワセ 【赤】品種:メルロー 大変革の真っ只中にあるフランス ロワールのナチュール
大きな変革の真っ只中にあるミュスカデ。この地のナチュールの先達であるランドロンやド・ベル・ヴューに続く、新世代の若いドメーヌが、今ミュスカデに次々と誕生しています。2020年に故郷のナントに戻り、新しくドメーヌを興した PIERRE GOISET ピエール・ゴワゼもその一人です。
ナント生まれのピエールは、学業を修めた後、サンテティエンヌでカメラマン兼ビデオディレクターとして 10 年近く働いていました。しかし、サンテティエンヌにあるナチュラルワインのバー「Chez Lulu シェ・ルル」で多くのナチュラルワインを味わううちに、ナチュラルワインの虜に。
当初はブドウの収穫の手伝いに行くだけでしたが、次第にワイン造りにも興味を持ち始め、北ローヌの Pierre-Jean Vila ピエール・ジャン・ヴィラ と Les Déplaudes de Tartaras レ・デプロード・ド・タルタラで働き始めます。並行してブドウ栽培と醸造のバカロレアの免状を取得しました。その直後、ピエールはナント近郊にある家族のブドウ畑を継承することになります。その時に妻のマリーが「さあ、本格的にワイン造りを始めましょうよ!」と言ったのです。こうして、ピエールは 40 歳を目前に、妻と二人の子供と共に生まれ故郷であるナントに移住。ヴィニュロンに転身し、ナチュラルワイン造りを始めたのです。
ドメーヌは、ナント近郊の Saint-Fiacre-sur-Maine サン・フィアクル・シュール・メーヌにあります。セーヴル川とメーヌ川の合流点にあり、なだらかな丘陵が点在し、最高点は海抜約60 メートル。ナントとサンテティエンヌの間を繋ぐロワール河の河口近くにあるため海の影響を受ける海洋性気候です。ドメーヌの栽培面積は 3 ヘクタールで、ムロン・ド・ブルゴーニュとメルローを栽培しています。畑の 8 割を占めるムロン・ド・ブルゴーニュはマッサルセレクションで 1950 年代に植樹された 60 年を超えるヴィエイユ・ヴィーニュで、残りの 2 割はジューヌ・ヴィーニュのメルロ-です。ドメーヌの畑は古代に侵食されたアルモリカン山の麓にあります。
片麻岩(へんまがん)と石英、花崗岩などの火山のマグマに由来する変成岩がモザイク状に広がっています。畑は、以下の 2 つのリュー・ディに分かれています。
栽培はビオロジックとビオディナミで、馬による耕作も行っています。畝の間にはカバークロップを生やしているため、ドメーヌの畑には、昆虫やトカゲ、野ウサギなどが沢山います。
剪定方法はギュイヨ・プーサールで、芽かきの段階で厳格に摘み取りを行って収量を調整します。ドメーヌの畑のブドウは成育力が低く、自然に低収量になるため、グリーンハーベストや除葉は行いません。
温暖化の影響で摘芯も行いません。ピエールは、ブドウ畑で自然が対
立しないように、草を生やし、土に生命を吹き込むように、自然そのものを表現しようと努めています。醸造においても、ピエールは全てを自分自身の手で、アーティザナル(職人的)な手作業で行うことにこだわりを持っています。このため収穫は手摘み。ブドウが潰れないように小さなケースで醸造所に運び、古い木製の手動式の垂直圧搾機で圧搾します。発酵は野生酵母で行われ、清澄や濾過をせずに熟成され、マロ発酵も自然に行われます。ピエールは真っ直ぐで逸脱しないワインを造ろうと努めているため、瓶詰め前に必要最小限の亜硫酸塩を添加します。瓶詰めもラベル貼り、ワックスがけも全て手作業です。
ピエールはローヌで働いていた経験から、ローヌの白ワインが好きで、ワイン造りにおいても、酸よりも苦みを重視しています。このため、ドメーヌのワインは他のミュスカデのドメーヌのワインと比べて、熟していて、まろやかで、ボリュームがあるのが特徴です(もちろんヴィンテージによって緊張感があるキュヴェも存在します)。また、伝統的にミュスカデではマロ発酵がブロックされていますが、ドメーヌでは、マロ発酵を自発的に行わせて、ワインにボリュームを与え、アロマを変化させています。さらに、亜硫酸の添加量が少ないため、よりオープンなワインとなっています。ドメーヌが目指しているのは、その年のヴィンテージを反映してくれる表現力豊かなワインです。
ピエールは、コンプレモンテールのマリオン・ペシューとマニュエル・ランドロン、ドメーヌ・ランドロンのジョー(父)とエレーヌ(娘)達と定期的に交流して、ブドウ栽培やワイン造りについて、意見交換をしています。また、ペトゥアン・エ・アンラジェなど、この数年にミュスカデで設立された、新しいドメーヌの交流グループがあり、それにも参加して知見を深めています。
ドメーヌのワインは 2021 年は初ヴィンテージですが、既に三ツ星のレジス・エ・ジャック・マルコンを始め、ナントやパリの若い星付きのレストランでサービスされて好評を博しています。